かつては〝幻のカード〟
永住権取得条件を緩和へ
早速、中国永住権の取得方法を紹介する…前に、まずは中国における、永住制度の変遷について見ていこう。
実は中国永住権の取得は、その条件の難しさから、近年まで〝伝説・幻のグリーンカード〟などと呼ばれてきた。中国人の配偶者や親がいる場合を除き、外国人が中国永住権を得るためには、中国で高額な直接投資をしていることや、中国に対して重要で突出した貢献をしたこと、国にとって必要な人物であると認定されることなど、かなり難しい条件が提示されていた。
中国で〝グリーンカード〟のような国際的概念に基づく永住制度「外国人永久居留証」の制度ができたのは2004年のこと。それでも取得のハードルは高く、同年から13年までに「外国人永久居留証」を取得したのはたったの7356人。中国に定住している外国人は約70万人だったそうだから、取得率は1%ほど。オーストラリアのグリーンカード発行数が毎年15万枚であることに比べると、中国の永住権はかなりの狭き門であった。
ところが15年、外国人永住制度に関する新たな制度が決定され、ここで永住権への門戸が一気に広がる。特に国際都市・上海市では取得条件を大幅に緩和し、市に4年以上定住し、年収が60万元以上、年12万元以上個人所得税を市に納めている外国人就労者は、所属する会社や地位を問わず、「外国人永久居留証」を申請できるようになった。これにより、上海市に住む多くの外国人に永住権取得のチャンスが生まれたのだ。続いて17年には、市の自由貿易試験区で働く外国人人材に対し、さらに緩やかな条件を提示するなど、対象人材は広がり続けている。
身分証カードが完成
永住外国人の保障進む
さらに永久居留証を保持する外国人への待遇も見直しが進む。17年、「外国人永久居留証」はカードタイプの「外国人永久居留身分証」へグレードアップ。ICチップが埋め込まれたこのカードは、中国における身分証明の役割を果たし、銀行手続きやホテルの宿泊など様々な場面において、中国人身分証と同等の使い方ができるようになった。
そして最近、04年の条例を見直す動きが出ている。永住権の取得条件に大きな変更はないようだが、〝在中外国人の権益保障〟をテーマに「外国人永久居留身分証」が使える機関が拡大される見通しで、議論されている。
このように、次々と改革が進められている中国の外国人永住制度。もちろん就労ビザなどと比べると審査は厳しいが、ひとたび取得すれば、生涯の中国生活がぐんと自由になることは間違いない。次のページからは「外国人永久居留身分証」の具体的な性能や、各人材の取得条件などを紹介していこう。
無期限、自由に活動可
では改めて、中国版グリーンカードこと「中国外国人永久居留身分証明証」の紹介をしよう。これは名前の通り、所有者が中国に期間の制限なく居留することを許可するもので、出入国管理局が発行している。発行手数料は1500元、カード発行費用は300元。
これがあれば、現在私たちが持っている就労ビザや親族ビザ、学生ビザの発行が不要になり、中国で自由に活動できる。ただし、カード取得後も1年のうち最低3カ月は中国に滞在する必要があったり、身分証カード自体は10年毎に更新する必要があったりするので、中国国民と全く同じ、というわけにはいかないようだ。
あらゆる手続きが簡単に
またこのカードを使って、様々な手続きが簡単になる。例えば、外国人は複雑な書類が必要になる中国銀行口座や証券口座開設も、必要書類は原則、このカード1枚でOKに。さらに高速鉄道の改札や、空港のチェックインに関しても、中国身分証同様、改札にピッとかざすだけで通過できるようになるなど、普段の生活がとても便利になる。これはうらやましい。
ほか不動産購入、子どもの公立学校進学、公的医療保険加入など、外国人にとって条件が難しかったり、できなかったりするけれど、中国に長く住んでいるならどうにかしたい問題が解決できるように。中国国民と極めて近い福利厚生や生活環境が手に入れられる。
では現在、どのような外国人がこのカードを取得できるのか? 上海市でカードを申請できる外国人人材は13タイプあるが、今回はそのうち、当てはまる人が最も多いだろう2タイプについて、その条件を見ていこう。
配偶者、子どもも永住者に
所属する会社や職位・職業を問わず、給与収入と納税額を以て永久居留身分許可証を取得できるのは、現時点で国内では上海市のみが採用している独自ルールだ。
毎年の給与収入が60万元というとかなりハードルが高く思えるが、これは税込みの額面なので、実際は月平均の手取りが4万元あればOK。また申請には、勤務先からの推薦書や営業許可証も必要になる。
このタイプの永久居留で魅力的なのは、申請者だけでなく、その配偶者や子どもも一緒に永久居留申請を行えることだ。さらに配偶者・子で特別必要なのは、申請者との婚姻・親子関係を証明する書類のみで、中国居留期間などの条件指定はなし。申請者さえ4年以上、毎年6カ月以上中国に滞在していれば、その期間配偶者と子が中国にいなくても、永久居留許可を一緒に取得できることも可、というわけだ。
また、このタイプで永久居留許可を得た人材は、海外から家政婦を呼び寄せるための通称〝家政婦ビザ〟の取得が容易になるという、ちょっと変わったメリットも。
外国人に開かれた都市、上海
ほか、市の「中国(上海)自由貿易区」、「中国(上海)自由貿易試験区臨港新片区」などにある企業で働く外国人は、さらに申請条件が緩やかに。同エリアで4年以上就労し、毎年6カ月以上中国に滞在していること、且つ毎年の納税記録が良好であれば申請条件をクリアする。
市以外の場所における永久居留申請条件に関しても緩和の動きはあるものの、その条件はまだまだ難しい。市は中国に定住したい外国人に、最も開かれた都市といえるだろう。
今後の生活保障がポイント
最後は、中国人と結婚した外国人が永久居留申請を行うための条件を紹介する。
このタイプにおける申請条件の要は〝申請者が中国で長期生活するための生活保障があるか〟。よって、老後を過ごすための資金として、申請者もしくは配偶者の口座に20万元を180日間置いておくことや、定住する住居の証明が要求される。住居に関しては、申請者自身か配偶者が不動産を所有していることが前提で、それがなく賃貸物件に住んでいる場合、大家(不動産所有者)全員が申請者の居住に同意するという声明書を提出する必要がある。中国の不動産は複数人名義になっていることが多いため、これは少々厄介だ。さらにもし、日本の法則に合わせ、結婚時に姓を変更していたら…。本人証明のための必要書類は、ざっと1・5倍になる。
日本に比べるとやや厳しい
参考までに、日本人の配偶者を持つ外国人が、日本で永住ビザを取得する場合の条件も見てみよう。婚姻や在留期間については、実態を伴った婚姻が3年以上継続し、且つ1年以上日本に在留していることなどが条件で、中国の永久居留権に比べると条件は緩やか。また中国のように生活保障金や住所などを要求されない代わりに、過去数年に渡り、申請者かその配偶者に安定した収入があることや、納税の義務を果たしていることなどが審査項目として挙げられている。
なお、中国の永久居留身分許可証を取得後に、中国人配偶者と離婚することになったとしても、配偶者ビザとは異なり、その理由で居留許可が取り消しになることはない。
~上海ジャピオン~
漢院中国語学校